2024 09,21 09:49 |
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
|
2006 04,26 23:15 |
|
「さて、参謀。物見の報告は?」
作戦会議室、ラルの問いに参謀と呼ばれた男は資料を見ながら口を開く。 「数はおよそ2500、大多数がスクルド様が申した冥界の化け物オークですが、3個小隊程度天使兵も確認されています。」 スクルドとエドはラルの説明でとりあえず解放されると共に客将としてエルベンシアの会議に参加していた。 「コチラの兵力を知りたいのだが。」 スクルドの言葉に再び参謀は資料を見る。 「コチラは前の戦いで相当消耗いたしまして現在1500。割合としては歩兵1000、弓兵400、投石などを行う工作兵100となっております。」 「単純計算でも2倍の戦力差か・・・・・・・、天使兵ということは空を飛んでくるだろうから歩兵じゃ歯が立たないしな。対抗できるのは弓兵と飛べるスクルドだけだ。」 「参謀、歩兵を少し弓兵に回せないかな。」 ラルの提案に参謀は首を横に振る。オーク達を抑えるのに精一杯なのに数を減らすのが無理なのは当然だった。策なしとその場の全員が黙り込んだ中、エドが不意遠慮がちに口を開く 「城壁の外にある堀に架けてある橋を落とすってのはどうだ?」 「それは確かに進入を防ぐ事ができますけど一時的なものですよ。」 「別にただ落とすってわけじゃないさ、篭城すると門に繋がる橋にオークが群がるだろ?その重さで崩れるようにしておくのさ。大体200は橋の崩れに巻き込まれるだろうし相手は混乱に陥ると思う。」 数秒の静寂後、将校達は頷き始める。ラルも頷く。 「いいんじゃないかな、ただ歩兵を出して少しずつ後退して誘い込むほうがいいだろうね。相手に警戒感与えたらうまくいかないかもしれないし。歩兵も弓兵に回す事も可能になるな。」 「そうだな、そして城壁上から工作兵の投石器で混乱に陥った敵軍を攻撃させればさらに混乱は増すだろう。それにあわせてあらかじめ架け橋を用意して歩兵が出撃するときに架ければ追撃も可能だな。私と弓兵はゆっくり天使兵の迎撃に集中できる。」 参謀が慌しく兵に命令を伝え始め、各将校も慌しく動き始める。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「どうした?」 その状況を呆然と見ているエドにスクルドが肩を叩く。 「いや、こんなアッサリ俺の思いついた案が通るとは思わなかったからな。」 「この国は堀や城壁があるとはいえ軍事国家ではないし、地形的に特殊なわけでもない。当然行える作戦も限られてくる。その中でお前の案が最適だとみんなが判断した、そういうことだ。これをお前に渡しておく。」 スクルドがエドに渡したのは一本の剣。 「これは?」 「封剣クロムヘル、持っていればドラゴンオーブに意識を奪われることも少なくなるだろう。お前には歩兵1小隊の指揮をしてもらうから戦闘のときも剣として使うといい。」 「へ~ドラゴンオーブの力を封じて剣としても使えるなんていい武器だな♪・・・・って俺も戦争に参加!?ついでに1小隊指揮ぃ?」 「今は出し惜しみ出来る状況じゃないのは見て分かるだろう?」 スクルドにそう言われるとエドは何も言えなかった。 その光景を見て、ラルは苦笑しながら口を開く。 「そろそろ準備してもらえるかな・・・。」 「すまない・・・では私は弓兵部隊のところに行く。お前も小隊を掌握しておけ。」 スクルドがそう言い、ドアを使わず窓から翼を使って飛び出して行くのを見送りながら エドは再びため息をついた。 「やれやれアリエッタまで戦線に出るとはこの国も終わりか?」 もうすぐ始まる戦闘のために弓の調子なども見ながら弓兵の男がつぶやくともう一人の弓兵の男も頷く。 二人の目線の先には緊張した面持ちで弓を調整している青長髪の一人の少女。 しかしその手はどことなく危なげで弓の扱いが苦手なことは見て明らかだった。 アリエッタと呼ばれた少女は弓兵部隊の中でも弓の腕は部隊でもダントツの最下位だった。 そんな説明をしているうちにもアリエッタの手から弓が落ち地面に音を立てる。 アリエッタが慌てて取ろうとするが、先に誰かが弓を拾い上げる。 弓を拾い上げた人物はきらびやかな金色の長髪に赤い鎧を着た女性の姿。スクルドだった。 スクルドが呆然としているアリエッタに弓を渡しながら話しかける。 「大丈夫か?」 「え、はい。あの、貴女は?」 「私は今回弓兵部隊の指揮を担当する堕天使スクルドという。よろしく頼む。」 スクルドが右手を差し出す。 「私はアリエッタ一等兵です。あ、あのよろしくお願いします。」 アリエッタがスクルドの手を握り返すとスクルドの無表情な顔がほんの少しだが 驚きの顔になる。なぜか手を離そうとしないスクルドにアリエッタが首をひねっていると スクルドは懐からビー玉程度の大きさの球体を取り出しアリエッタに渡す。 「えっとこれは?」 「とりあえず持っておけ、損はしない。」 そう言って歩き去っていくスクルドをアリエッタは呆然と見つめていた。 エドも自分が指揮をする小隊に自己紹介をしていた。 「今回この傭兵小隊の指揮を担当するエドだ、よろしく頼むよ。」 「うん、よろしく~~~♪」 エドの自己紹介にまず反応したのは見た目十数歳の少女。 身軽な皮の鎧を着ており、手に持っている獲物は刀身が普通より長く反っているナイフを持っており、 先ほどから楽しそうにピョンピョン跳ねながら嬉しそうだった。 そしてその後ろには頬にある傷が特徴的な剣士風の男。 「え~とねぇ~私はテリミアって言うの。それでもってこっちの傷男がガル。 とりあえず最近までこの小隊の指揮をガルと私でしてたんだけどぉ~やっぱ支持とかするのメンドイし、戦闘に集中したいから新隊長大歓迎~♪ね、ガル?」 「ああ、そうだな。やっぱ俺はこれをぶん回すに限るからな。」 ガルの手には人一人の大きさがあるだろう巨大な戦斧。テリミアがスピードタイプだとしたらガルはパワータイプなのだろう。 他の小隊の兵士もいかにも傭兵といったいでたちだった。 正直この傭兵隊を短期間で纏め切れるか不安だとエドは思っていた。 PR |
|
2006 01,27 23:51 |
|
「で、牢に逆戻りってわけか・・・・・クソウ。なぁ、スクルド。」
「なんだ?」 牢の中、鉄格子越しにエドが問いかけると隣の牢からスクルドの声が聞こえた。 「そろそろ教えてくれないか、このドラゴンオーブの事やアンタが今しようとしてる事を・・・・。」 “ふむ”と少し間を空けた後、スクルドは静かに話しを始めた。 「この世には三つの世界がある。主神であるオーディンが支配する天使の世界・・・・天界、ヘルが支配するオークなどの愚者の世界・・・・冥界、そして人間達の世界・・・地上。この三つの世界のパワーバランスを保つための宝玉が三つ。天界の鳳金玉【フェニックスオーブ】、地上の竜紅玉【ドラゴンオーブ】、冥界の鮫蒼玉【シャークオーブ】だ。お前自身で経験しているとは思うがこの三つの宝玉は凄まじい力を持つが扱いをひとつ間違えれば肉体が乗っ取られ、また世界を滅ぼしかねない。」 「確かに意識がなくなることが・・・・・・・・・・。」 エドは驚いたように自分の右手にあるドラゴンオーブを見る。 「それだけではない、この三つの宝玉は生物に寄生する。そしてその強大な力を宿主に与える代わりに宿主の生命を削り取っていく。」 「なっ!?つまり俺はコイツの力を使うたんびに寿命が縮んでしまうってことか!!」 ドラゴンオーブをムリにでも取ろうとエドは右手の甲を引っかき始める。 「言い忘れてたが一旦寄生したら死ぬまで解放されないぞ。」 「それを早く言えぇぇぇぇぇ!!!!右手が血だらけになっちまった!!」 「フフフ、お前バカだな。」 「バカじゃねぇよ、というかアンタ今笑ったか?」 スクルドは“気のせいだ”と言って再び黙ってしまう。 「まぁ俺の右手にあるドラゴンオーブのことはいいとして・・・・・お前は何が目的なんだ?」 「・・・・・・・これに関しては聞けば私に付き合ってもらう事になる、いいのか?」 「いいよ、ここまで来たんだからな。付き合ってやるよ。」 「・・・・・・・・・わかった。ならば話そう。まずは私の落とされた理由から話そう。 私を地上に落としたオーディンは強大な力と知略で主神へと上り詰めた神だ。しかし力に対する欲が強すぎた。フェニックスオーブの力を得てからオーディンはさらに力を欲するようになった。そして目をつけたのがドラゴンオーブだ。冥界のヘルと取引をしたオーディンはヘルから借りた冥界軍と天界軍に地上進行と地上にあるドラゴンオーブ他神具と呼ばれる神の造った強力な武器、宝具の回収を命じたが・・・・・・・・・・私は反対したんだ。」 「んでもって反対したから地上に落とされたっと言うわけだな?」 「ああ、なんせ私は主神を馬鹿呼ばわりしたからな、当然といえば当然だ。」 エドはスクルドのその言葉におもわず頭に手をあて苦笑する。 「主神って俺たちで言えば王様だろ?よく言ったねぇ~」 「私は正直がとりえでな。話を戻すぞ。最終的に私の目的は3つ、転生して地上にいるヴァルキュリア達を目覚めさせ仲間にし、天界冥界混合軍の侵攻阻止、神具の回収とドラゴンオーブの守護をしようとしている。」 「ちょっと待て。転生して地上にいるヴァルキュリアってなんだよ?」 「そうだな・・・しいて言えば地上に時たま出てくる冥界の愚者を処理している天使だな。私もそうだった。この任務はかなりハードでな、26人いるが13人づつ100年交代で処理に当たり、担当していないときは人間に転生し魂を休息させるのだ。」 「なる・・・。」 「なるほどねぇ~、つまり僕達の味方だと思っていいんだね?なんちゃって~」 「うわっ!?あんた誰だ!?」 スクルドとエドの牢の前に一人の男が立っていた。眼帯をつけた見覚えのある顔。 「この国の王だよ、名前はラル。転生前の名は、ヘルヴォル・アルヴィト、軍勢の守り手と言う意味の名だよ。久しぶりだねスクルド。」 ラルと名乗った王はまずスクルドの牢の鍵を開ける。するとスクルドは牢から出ながら口を開く。 「目覚めていたのか、ヘルヴォル。」 「ああ、と言ってもあんた達が僕の目の前に現れた時だがね。ん~、転生して男になるというのも新鮮だねぇ~♪」 「へ?どういうことだ?男?」 ラルはヤレヤレと言った表情でエドの鍵を開けエドの疑問に答える。 「僕達ヴァルキュリアは基本性別は女・・つまり女神の部類に入るのさ。ただ転生して人間になったらそんなもの関係ないからね、転生した人間が男である場合もあれば女である場合もあるんだ。まぁ転生しても僕みたいに天使の時の記憶がよみがえる奴は少ないからあんまり関係ないけどね。」 「私に協力してくれるのか?ヘルヴォル。」 “ん~”とラルは軽く悩みニコッと笑う。 「いいよ、まぁ腐っても今、僕はこの国の王だ。国民を守る役目があるからね。逆に協力もしてもらうよ、現在再び冥界天界混合軍がこの国に接近中だ。」 「よかろう、協力しよう。この国が私達の拠点になりそうだしな。」 「私達?彼をパートナーにする気なのかい?スクルド。」 笑いながらラルは牢屋の出口へと二人を案内する。 「先ほど私に付き合うという契約で私の過去とこれからやることを聞いたのだ。これからこき使ってやるのさ。なぁエド?」 「なんかすっげぇ後悔の念が沸いてきたよ・・・・・・・・・・・。」 頭を抱え苦笑しながらエドはスクルドとラルの後をついて行った。 |
|
2006 01,26 00:01 |
|
エドは右手の痛みで目を覚ます。
身を起し周りを見る。自分には毛布がかかっており、目の前には焚き火が焚かれていた。 ふと左肩に重さを感じ見るとそこには金髪の女性がエドの肩に寄り添って寝ていた。 「あ~、え~と・・・・・まぁ・・・・・・。」 そのことにうろたえたエドだがゆっくりと頭の中を整理して深呼吸・・そして金髪の女性・・鎧姿ではなく村人の姿に変わっているスクルド(睡眠中)の肩を掴み大きく息を吸った。 そして・・・・・、 「てめぇぇぇぇ、なに人の肩を枕代わりに寝てるんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」 「うるさい、毛布がひとつしかないんだ。後でお前が疑問に思ってることを全て話してやる、私はまだ眠い、睡眠の邪魔をするな、以上。」 「い、以上っておまえ・・・・、ってもう寝てるよ、コイツ。」 しょうがないのでスクルドを起さないように街の方を見ると煙は上がっているものの占領は免れているようだった。 「化け物の軍団は退けたようだな・・・・・・、よっぽどいい軍師がいるんだろうな、エルベンシアには。」 エドは何気なく自分を起こした痛みの元である右手を見る・・・そして。 「お宝が俺の手にめり込んでいる?いや完璧に体の一部になってるな、ハハハハ・・・・・ってなんだよこれは!?オイ、起きろ!!」 エドによって起こされたスクルドは眠そうに目を擦りながら言う。 「お前はドラゴンオーブに選ばれたのだ・・・・・それだけの・・・・・すぅ~・・・・こと・・・すぅ~だ・・・・すぅ~・・・お前はドラゴンオーブの力を借りて・・・すぅ~・・・オークの部隊を全滅させただろう?・・・すぅ~」 首を横に振って目を覚まし喋って寝そうになる・・を繰り返しながらスクルドは言うのでとてつもなく聞きにくくエドが“わかった”というとすぐに寝てしまった。 結局スクルドが起きたのは太陽が昇りきった正午だった・・・・・。 「で、いつになったら話してくれるんだ?」 エドの問いを完全に無視して村人姿からエドが初めて見たときと同じ紅い鎧を着てスクルドは歩みをエルベンシアへと進める。 “はぁ~”とため息をつきながらエドは仕方なくスクルドの後を歩く。 「どこへ行く気だ?」 「エルベンシアに戻る・・・・・、飛ぶぞ。」 「へ?・・・・うわっ!!」 スクルドはそう叫ぶエドの腰に手を回し、翼を羽ばたかせ空へ飛び立つ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぁ、アンタ名前は?天使?」 しばらく初めてのスクルドに抱えら、空からの眺めに驚きをもって黙っていたエドが口を開いた。スクルドも飛びながら答える。 「スクルド・・・・・正確に言えば堕天使だ。堕とされる前、天界では未来を司ると言われていた。」 「なんで堕とされたんだ?」 「主神の意向に反対したから・・・・・だ。」 そう言ったスクルドの表情は少し悲しげだった。そんな会話をしているうちにエルベンシアの街並みが見えてくる、そして城壁を飛び越え街並みを眼下にしながら飛び、やがて城が・・・・・・。 「城に行くのか・・・・?ん?城から煙が・・・奇襲か!?」 「行くぞ!!」 「え?行くって、ちょ、ちょっとまてぇ!!」 スクルドは剣を抜き城の窓に向けてエドを投げる。エドは窓を割り城の中に何とか着地し その後を追ってスクルドもゆっくりと着地する。 「あ~スクルド・・・・どういう目的でここに来たのかはしらねぇけどさ、着地場所間違えたんじゃねぇか?」 二人が降り立ったのは王座のある広間・・・そして眼帯で片目を隠した若き王を守る衛兵達と城に襲撃を仕掛けた張本人らしき兵士達の間だった。 スクルドが漆黒の翼を広げると、城を襲撃した兵士達も白い翼を広げた、天使兵と呼ばれる天界の兵士だった。 スクルドは無言でグラン・スティングを構え天井高い広間で飛び立つと天使兵達も飛び立ち一気にスクルドに襲い掛かる。エドはうろうろとした後呆然としていた衛兵達に王を奥に避難させるように言う、衛兵は急いで王を奥の部屋へと避難させて行った。 そんな中一人の天使兵が急降下しながらエドに接近してくるのでエドはナイフを構えるが 「クッ!!」 天使兵の攻撃を受けきれずに吹き飛ばされナイフも弾き飛ばされる。倒れたエドに向かって天使兵が追撃を加えようと再び空中から急降下してくる。 思わずエドが右手でガードしようとした瞬間右手に紅い大剣が現れ、天使兵の斬撃を弾く。 天使兵は驚きながらもう一度飛び上がり急降下で再び襲ってくる。 「オラァ!!!!」 普通なら人一人では持ち上げられないような大剣を軽々と横に薙ぎ天使兵を切り倒す。 「なんだ、この剣、どこから出てきたんだ?しかもめっちゃくちゃ軽い!!」 一人がやられたことでスクルドに向かっていた天使兵の半分がエドに襲い掛かる。 エドは低空でくる天使兵に真正面から突っ込み剣先で地面を削りながら斬り上げ一人を真っ二つに斬り倒す。あおして剣を握っていない左手で続いてきたもう一人の天使兵の頭を掴み地面に叩きつける。 「ハハッ・・・ハハハハハ♪」 エドは自分の左手に付いた天使兵の血を見ながら笑っていた。よく見れば天使兵を斬り捨てている大剣を持つ右手のドラゴンオーブが光っている。 「まずいな・・・・・制御しきれていない。暴走か・・・・・。」 スクルドは自分に向かってきた天使兵を倒し、エドに近づくとエドはスクルドにまで向け大剣を振り回す。エドの目はオーク部隊を全滅させたときのように金色になっていた。 スクルドは軽い身のこなしでエドの斬撃をかわし、懐に入り込みエドの額に指を当てる。 するとエドの額に当てた指先が光りエドの体からドンドンと力が抜けていく。そして・・・ 「あれ・・・?俺は?」 「自分をしっかり持て。でないとドラゴンオーブに意識を飲まれて関係ない奴らもこのようにしてしまうぞ。」 周りにはエドに無残に斬られ絶命した天使兵の遺体が転がっていた。エドは思ったよりショックも受けていないようだったが頭を抱え少し呆れ気味に呟いた。 「あ~、意識がどうだとか、飲み込まれるだとかよく分からないんだがよ、スクルド。この状況どうするよ?」 そう、エドとスクルドは数十人の衛兵に槍を突きつけられ囲まれていた。 |
|
2006 01,24 00:34 |
|
「だから俺はやっちゃいないって!!出してくれよ!!」
エドは牢の鉄格子を掴み、叫ぶが誰も反応しない。エドは諦めたように壁に寄りかかる。 「はぁ~あ・・・・にしてもせっかく手に入れたお宝もリュックごと取り上げられちまうし・・・・・。」 そう、スクルドが飛び去った直後に王室へ衛兵がなだれ込んできてあっという間に捕まり衛兵殺しの罪で捉えられてしまったのだった。 エドは再び深いため息をつき頭を押さえる。 「やっぱり死刑かな・・・・・・・・・・・トホホ。」 その時、ドサッと人が倒れる音がするので鉄格子越しに通路を見ると牢番の兵士が倒れており、その横には王室で見た金髪の紅い鎧を着た女・・・スクルドが立っていた。 スクルドはユックリと歩みを進め、エドのいる牢の前で止まる。 「おい、あんたはいった・・・・・」 「ドラゴンオーブはどこだ?どこへやった?」 「しるか・・・・あのお宝はリュックごと衛兵に取り上げられちまった!!」 静かな口調でいきなりそう聞かれエドは語気を強めて言うと“そうか”と言い踵を返し牢屋から出て行こうとする。 「ちょっとまてよ!!」 「・・・・・・・なんだ?」 エドが叫ぶとスクルドは足を止め迷惑そうな顔をしながら振り返る。 「あんたや、俺を襲った兵士・・あのお宝は一体何なんだ!?」 「お前の知る必要はない・・・・・。来たか・・・・・。」 スクルドがそう言って牢屋の天井を見つめた瞬間、その場に激しい揺れが襲う。 「ッ・・・・・・・・・・・・・・・・な、なんだ!?」 牢の小さな鉄格子の入った窓から外を見ると城壁の部分に煙が上がっておりその向こうに はオークたちの軍団がもう間近まで近づいていた。 ふとエドが窓から通路に視線を戻すとそこにスクルドはおらず、一枚の黒い羽が落ちているだけだった。エドは黒い羽を拾いなんとなくそれを懐にしまう。すると兵士が数人牢屋に入ってきて牢の鍵を開けていく。そして全部の牢の鍵を開け終えると兵士は叫んだ。 「この国はこれから戦いの場所となる、貴様らを監視している暇はない!!よって釈放とする!!さっさとこの国から出て行くがいい!!」 それだけ言って兵士達は走り去ってしまう。エドはやれやれといった顔をして牢屋見張りの机の下にまとめてある囚人の私物の中から自分のリュックを探し出し中を見る。中は不思議な事に探られた様子は無く紅く光る水晶も入れたままであった。エドはリュックを背負って他の囚人達を連れそって城を後にした。 「さて、どうすっかなぁ~」 エドはそう言いながら街を出て坂道を登る・・・後ろを見るとすでに城壁付近で戦闘が始まっているのがわかった。 「命あってのものだねだぜ、まったく。」 そう言ってエドが視線を前に戻した・・・・その時隣を歩いていた囚人だった一緒に脱出した男達がいきなり倒れる。 「なっ!?」 倒れた男たちへ目を向けると倒れた男たちの胸には矢が刺さっていた。 エドが再び前を向くと坂の上で数十匹のオーク弓兵部隊が弓を構え、そして・・・・。 「え?」 エドが疑問の声を上げ自分の左胸を見ると矢が深く突き刺さっていた。足に力が入らなくなり倒れる。その拍子でリュックからドラゴンオーブが転がり落ちる。 ゆっくりとオーク達が倒れたエドの方へと歩いてくるのを薄れゆく視界で捉えつつエドは最後の力を振り絞り右手で転がっていたドラゴンオーブを掴んだ・・・・・、 ”死にたくない・・・・死にたくない・・・” 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 エドはドラゴンオーブを握った瞬間何かが握った右手から流れてくるのを感じ、そして叫びながら立ち上がる。よく見ると立ち上がったエドの右手の甲にドラゴンオーブが融合しており・・・・目の色が伝説の怪物・・・ドラゴンと同じ金色になっていた。そして背中にはまさしくドラゴンの翼。エドは無言で右手をかざすと何もないところから紅の大剣が現れる。 それを両手で握ったエドはオーク達に突っ込んでいく。オーク達は一斉にエドに向け矢を放つがエドは大剣で薙ぎ払い、叩き落しながらスピードを緩めず突っ込んでいき、横薙ぎ。 十匹ほどのオークがまとめて上半身と下半身を真っ二つに切断される。そして凄まじい衝撃波が起き他のオーク達も吹き飛ばし、オーク達は木や岩に激突して絶命する。 「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・。」 十数分後・・・・、オーク弓兵部隊の死体の山の中心にエドは荒い息をしながら立っていたが意識を失いそのまま倒れてしまう。ドラゴンオーブと呼ばれた赤水晶はエドの右手に融合したままだったが、目の色は元に戻り翼も無くなっており胸の傷は治っていた。 気絶し、倒れているエドの隣に降り立つ影があった。スクルドだった。スクルドは気絶しているエドを見ながら悲しそうに呟いた。 「この男を苦難の道に引きずり込もうというのか・・・・竜紅玉【ドラゴンオーブ】よ。」 スクルドの言葉にエドの右手に融合しているドラゴンオーブが答えるように点滅した。 |
|
2006 01,22 23:37 |
|
平原国家【エルベンシア】
商業と農業で発展してきたこの国に所属不明の怪物軍団が攻め寄ってきているという事で 騒がしくなっていた。軍事国家ならともかく、この国は軍事力に関して決して強力とは言えなかったのである。街の人々は次々と国を出て行き、兵士達は開戦の準備に忙しく駆け回っていた。 「やれやれ、兵隊さん達も大変なこったねぇ~」 酒のグラスを片手に黒髪の若い男性が窓の外を走り回る兵士達を見ている。 その姿は身軽な服装をして頭にはバンダナを巻いてラフな格好をしていた。 黒髪の男は一気にグラスの中の酒を飲み干す。 「そろそろこの国も潮時か・・・とっとと他の国に逃げるかね。マスター、酒オカワリ~」 「ったくお前はいいぜ、エド。俺はこの酒場があるから逃げるに逃げれねぇってのによ。」 黒髪の男・・・エドはマスターから渡されたオカワリを一気飲みし、金をポンと置き立ち上がる。 「ごちそうさん。マスター、店も大事だろうけどさ、やっぱ命あってのモノだねだ。たったと怪物どもの軍団が来る前に逃げろよ。」 “そうするよ”と適当に答えるマスターの声を聞きながらエドはユックリと酒場を後にした。 酒場を出たエドは街の中心に大きくそびえ建つ城に目を向ける。 「今夜はこの国で最後の仕事だな・・・・・。」 宿の自分の部屋に戻ったエドは外が暗くなるのを待ち、暗くなるとベットの上に置いてあるリュックサックを背負い宿を出る。そして人目につかぬように細い裏道を複雑に通り城 の周りにある城壁の前にやってくる。いつもだったら衛兵のいるその場所も戦争前の準備で衛兵が駆り出されているためだれもいなかった。 エドはリュックの中から鍵爪付きのロープを取り出し城壁の上部にそれを投げ鍵爪が引っ かかるのを確認するとユックリと登っていく。 そして場内に入ると一気に階段を駆け上りある部屋の近くまでたどりつく。 曲がり角からこっそり目的の部屋の前を見ると二人の衛兵が槍を持って立っていた。 エドは一旦階段まで戻りさらに上の階に行く。そして適当な部屋に忍び込みベランダから ロープを下へと下ろす。そしてロープを伝って下の階のベランダへと降り立つ。 そこは先ほど衛兵二人が警備していた部屋・・・・豪華な家具に巨大なベットがある。 王の部屋だった。 「さて、お宝お宝・・・・・。」 そう、エドは盗賊だった、王室に宝が置いてあるという情報を得たエドは衛兵の少ない このときを狙って城に忍び込んだのだった。 棚などを一通り探した後、ベットの下を覗くと一つの小さな箱があった。 エドは手を伸ばしその箱を取る。そして中を見ると赤色に光り輝く小型の水晶が入っていた。 その時だ・・・ガタッという物音にエドがベランダの方を見るとそこにはいつの間にか一人の鎧兜を着た兵士が立っていた。しかしその鎧はエルベンシアの兵士のものではなかった。 「あんた、なにもんだ?この国の兵士じゃねぇだろ。」 「そんなことはどうでもいい、その水晶を渡してもらおうか。」 兵士がゆっくりとエドに近づいてくるとエドはリュックに箱ごと赤く光る水晶を入れ腰に 隠してある小型の投げナイフに手を掛ける。 「俺が見つけた宝だ、お前にやる義理はない!!」 そう言って投げた五本の投げナイフだが兵士はことごとく避け、鞘から剣を抜きエドに向けて振り下ろす。エドは横に転がりそれを避けるがベットのシーツがことごとく裂ける。 物音を聞きつけ、外に立っていた衛兵が慌てて部屋に入ってくる。 「貴様らこの部屋でなにをしている!!」 兵士は舌打ちをして衛兵に向けて走る。衛兵も慌てて槍を構えるが兵士は槍を一刀両断し 二人の衛兵を一瞬にして斬り伏せる。 「お前、いったいなんなんだよ!!」 エドは大型ナイフを取り出し兵士に斬りかかるが兵士も受け止め時には反撃してくる。 そして兵士は素早い動きでエドの足を蹴り倒し剣を再び振り下ろす。 「そこまでにしてもらおうか・・・・・フレイ。」 振り下ろされた剣が蒼く点滅する剣に止められていた。蒼い剣を持っているのは赤い鎧兜に身を包んだ金髪の女性。 「なんだ・・・・スクルド。貴様は地上に堕ちても主神を邪魔するのか?」 兵士は顔まで包んでいた兜を外すとそこには眉目秀麗な男の顔があった。フレイと呼ばれたその男は鎧を脱ぎすて剣をスクルドに向け、構え直す。スクルドも蒼く光る剣を構え直す。そして数太刀、剣をぶつけ合うとフレイの持っていた剣が折れて床に落ちる。 「やはり人間が鍛えた剣では神の鍛えた剣には敵わないか・・・・・、主神も困ったものだ・・・、いくら冥土の土産とはいえグラン・スティングを与えるとは・・・・・。」 そういってフレイはユックリと後ずさりベランダに立つ。 「ここは城の高層階の王室だぞ・・・・・・・・・どうする気だ?」 エドが呟いた瞬間、フレイの背中に白い翼が生え空に飛び上がったのだ。 「ドラゴンオーブの確保、今回は諦めよう・・・、急ぐものでもないしな。この国を滅ぼしてから手に入れればいいだけだ。スクルド・・・・貴様は地上に堕ちてまで我々に歯向かうつもりだと主神にお伝えしておこう。」 フレイはそう言い残し空の彼方へと飛んでいった。 それを見送ったスクルドは鞘にグラン・スティングと呼ばれた蒼く光る剣を収める。 よく見れは彼女の背中にも翼があった、ただし黒い翼が・・・・・・。 「あんた達はいったい・・・・・・。」 エドがそう言うがスクルドはエドを一瞥した後ベランダから無言で飛び立って行ってしまった。 「なんなんだよ、いったい・・・・・。」 エドはスクルドの飛び去った方向を見ながらしばらく呆然としていた。 |
|